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今回の記事は、佐藤 正午著『熟柿』の書評・感想です。
本書を一言で紹介するなら…
ひき逃げの罪で息子と会えない母親の半生・家族愛を描いた長編小説
以下に当てはまる人は、ぜひ読んでください。
本書は、Amazonの聴く読書「Audible(オーディブル)」の聴き放題対象本です。
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『熟柿』書籍情報

激しい雨の降る夜、眠る夫を乗せた車で老婆を撥ねたかおりは轢き逃げの罪に問われ、服役中に息子・拓を出産する。出所後息子に会いたいがあまり園児連れ去り事件を起こした彼女は、息子との接見を禁じられ、追われるように西へ西へと各地を流れてゆく。自らの罪を隠して生きる彼女にやがて、過去にまつわるある秘密が明かされる。
・著者:佐藤 正午
・出版社:KADOKAWA
・ページ数:368ページ

えげつない読後感、しばし放心すること間違いなし!
本作は、2026年の本屋大賞にもノミネートされました!
>【オーディブルの本屋大賞】絶対に聴くべき10選と聴ける全タイトルを解説
『熟柿』の感想(ネタバレなし)

本書を読んだ感想は、以下の2点です。
独特のリーダビリティーがある
「書籍情報」のあらすじを見てください。
主人公のかおりは、轢き逃げの罪で息子と離ればなれになっているんです。
母親としては、どんな手段を使っても会いたい。その感情が、彼女を突き動かしていきます。
これからどうなってしまうのか?息子には会えるの?

展開が気になりすぎて、ページをめくる手が止まりませんでした。
そして本書で印象深いのが、「電話」。
途中、流浪人ともいえるかおりの元に、さまざまなシーンで着電があります。
謎の電話を起点に、じわじわと化学反応が起きるストーリー。リーダビリティーが素晴らしい作品です。
手紙のような手記が切ない
会えない息子に向けて日々、素直な感情を綴っていくかおり。
お母さんは、今〜〜にいます。〜〜しています。
1文字1文字、手紙のごとく丁寧に綴られていて、母親らしさ全開。
しかし現状をつぶさに語ったところで、その思いが届くことは決してありません。

なんという悲しい現実…
その切なさを思い、読みながら心が揺さぶられました。
『熟柿』ネタバレ・あらすじ解説

ここからは『熟柿』のネタバレ・あらすじ解説です。
ネタバレを見たくない方は、以下のボタンをタップ!
事件
市木かおりは親戚の法要に出席、帰り道にひき逃げ事件を起こしてしまいます。
助手席にいた夫は泥酔。パニックを起こした彼女はそのまま発車。

轢かれた老婆は、そのまま亡くなってしまいました。
しかしタイミング悪く、彼女のお腹には新しい命が。
罪人となったかおりは収監され、産み落とした息子と離れ離れになります。
栃木で過ごした二年半のことも切れ切れにしか思い出せない。
【出典】『熟柿』P.32
この一文、読みながら一瞬「?」となりました。
でも直後の記述から、栃木の刑務所で生活していたことが分かります。
ただ「会いたい」
会いたい、会いたい、息子に会いたい…。
彼が会いに来るのを待つだけでいいのか。自分から行動を起こせば、会えるのではないか?
かおりは幼稚園、そして小学校の入学式に足を運んで、その顔を見ようと試みます。

おお、会えるのかな?
しかし幼稚園では、人違いで誘拐犯となって警察沙汰に。小学校でも「ニセの母親」として騒ぎが起き、その場を離れることに。
息子との距離、あと数百メートル。しかし、ひと目見ることすら叶いません。
悲しみに暮れる彼女は、思い直します。
そして、1つの決断を下します。息子に会うのはやめよう、と。
流浪の日々
息子に会わないと言っても、愛する気持ちは変わりません。
彼女は、生命保険の受取人を息子にすることを思いつきます。
「久住呂さん、わたしを、久住呂さんの会社の生命保険会社に入れてください。どうかよろしくお願いします」
【出典】『熟柿』P.111
全国を転々としながら、住み込みで掛け金を稼ぐ生活。
山梨(旅館)→岐阜(食品工場)→大阪(パチンコ屋)→福岡(ホテル)
その姿は『正体』『八日目の蝉』といった作品に通じるものがあります。
しかし流浪の日々も順調ではなく、大阪で1つの大きな事件が起きてしまいます。
約五百万円の盗難被害
職場の同僚に、銀行の通帳を保管していた金庫と銀行口座の暗証番号を見破られてしまったのです。
その番号は、息子の誕生日。仇となったのが、母親としての思いを綴っていた手記。

あまりに皮肉…このシーンは読んでいて息が止まりました。
会いたい気持ちを素直に書き出したことが、自分の首を締める結果になってしまったのでした。
まさかの真相
驚きの展開はもう一つ。それは、あの轢き逃げ事件の真相です。
物語の終盤、謎の番号から繰り返し着電があるのですが、電話の主は元夫の徹也。
息子への真実告知(出自を知る権利)を話し合うなか、かおりは違和感を覚えます。さて、彼は何と言ったのか?
「ただ、そうしろと言わなかった俺も悪いと言えば悪いんだ」
【出典】『熟柿』P.315
お酒を飲んで泥酔していた。助手席で寝ていた。かおりは自分が人を轢いたことに、夫が気づいていないと思っていたのです。

だからこそ、贖罪の半生を過ごしてきたわけね。
でも起きていたのだと仮定すると…
どうして私だけが、どうして…そんな思いがリフレインしてしまう。

このシーンで、感情が崩壊しました。
拓との関係(結末・ラスト)
そして念願が叶って、息子の拓と出会うことになります。

おお、ついに!よかったね!
とはいえ、二人の間に流れる空気にはちょっと違和感が…
会話が生まれず、ただひたすら歩くだけ。お互いに牽制し合って、何を話すか探っているのです。
無理もないでしょう。
息子には新しい家庭があり、距離感を測りかねてしまう。母親にも言葉にできない苦しい過去があり、ようやく息子に会えた。
言葉が出てこないかおりの感情は、このシーンでも手紙のカタチで表現されています。
「拓、お母さんはいま、あなたのそばにいてあなたのことを考えています。…」
【出典】『熟柿』P.338

その後の会話は、もう涙無しでは読めません。
えげつない読後感にもつながる結末・ラストは、ぜひ本書で堪能してください。
タイトルの意味
物語のラストで、タイトルの「熟柿」に関する説明があります。
熟した柿の実が自然と落ちるのを待つように、気長に時機が来るのを待つこと
つまり、自分から追いかけてもどうにもならないことは存在する、ということですね。
でも正直、こう思いました。

え、それはちょっとキツくない…?
たしかに時の流れが、心の傷を癒やしてくれることもある。大抵のことは、時間が解決してくれるのも事実です。
でもここで気づくのは、かおりという人物が「熟柿の哲学」と真逆の生き方をしていたということ。
息子に会いたい。会えないなら、別の方法で生命保険を。その思いだけで、彼女はずっと動き続けてきた。待つのではなく、動く人生でした。
だとすれば、著者はなぜこのタイトルを選んだのでしょうか。
同じ「熟柿」という言葉も、受け取り方によって意味が180度変わってくる。

そこに、この作品の奥深さがありそうね。
あなたが同じ立場だったら、待てますか?
自分だったら、絶対に待てません。

どんな手段を使っても、息子に会いに行きます。
だからこそ、かおりの生き方が胸に刺さり、えも言われぬ読後感になったのだと思います。
『熟柿』耳読レビュー

今回紹介した『熟柿』は、Audible(オーディブル)の配信があります。
作品情報と、実際に聞いた5つ星レビューはこちら。
・再生時間:13 時間 1 分
・ナレーター:中嶋 美風雪
| 項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| おもしろさ | 重いテーマ | |
| 聴きやすさ | 時系列通りで混乱しにくい | |
| ナレーター | 落ち着いたナレーション | |
| 目次 | 目次あり |
ナレーターは1人ですが、男女の使い分けも自然ですし、方言も違和感なく聴けました。

そして繰り返しますが、先の気になる展開力が圧巻です。
5分のサンプルは無料で聴けますので、以下のリンクからチェックしてください。
『熟柿』まとめ

本書のオススメポイントは、3点です。
- 重いテーマで読後感がえげつない
- 独特のリーダビリティがある
- Audibleでも聴きやすい
いやいや、この本を読み終わった後の読後感といったら…

これが本当の放心状態ってやつか、と思いました。
自分の罪、贖罪という行為、そして時間をかけても報われるとは限らないという残酷さ…これらを「これでもか」と突きつけてくる1冊でした。
クセの少ないナレーションで、時系列通りにストーリーが展開するため、Audibleでも無理なく聴けます。
タダで聴けると本を買うよりお得なので、ぜひ無料体験を使って聴いてみてくださいね。
佐藤正午さんといえば、以下の作品も、Audible(オーディブル)の聴き放題対象です。


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