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今回の記事は、湊かなえ著『暁星(あけぼし)』の書評・感想です。
本書を一言で紹介するなら…
「宗教二世」を描いた、どこまでも余韻が残り続ける長編小説
以下に当てはまる人は、ぜひ読んでください。
本書は、Amazonの聴く読書「Audible(オーディブル)」の聴き放題対象本です。
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『暁星』書籍情報

現役の文部科学大臣で文壇の大御所作家でもある清水義之が全国高校生総合文化祭の式典の最中、舞台袖から飛び出してきた男に刺されて死亡する事件がおきた。逮捕された男の名前は永瀬暁、37歳。永瀬は逮捕されたのち、週刊誌に手記を発表しはじめる。そこには、清水が深く関わっているとされる新興宗教に対する恨みが綴られていた。
また、式典に出席していた作家は、永瀬の事件を小説として描く。ノンフィクションとフィクション、ふたつの物語が合わさったとき見える景色とは⁉
・著者:湊 かなえ
・出版社:双葉社
・ページ数:376ページ
・再生時間:11 時間 38 分
・ナレーター:櫻井 孝宏, 早見 沙織

斜め上のさらに斜め上を行く展開・結末で、読後は放心状態になりました…
著者による第29作目の超大作であり、Audibleのオーディオファースト作品です。
『暁星』あらすじ

「現役の文部科学大臣・清水義之が、男に刺されて死亡した」
刺した犯人は、永瀬暁・37歳。
作品の前半では清水が関わっているとされる、宗教団体「世界博愛和光連合(通称・愛光教会)」に対する恨みが暁の手記で綴られていきます。

彼の不遇すぎる家庭環境、そして悲しい過去も…
しかし本作は、暁の私怨・その背景を深堀りするだけにとどまりません。
後半で1人の女性に関するストーリーが展開されるのですが、作品の前半と重なり合い、一つの事実が浮かび上がるのです。

その衝撃的なラストが、本作の見どころです!
『暁星』の感想(ネタバレなし)

本書を読んだ感想・考察は、以下の2点です。
重層的な構成がニクい
本書では事件に関連して、2つの物語が展開されます。
前半だけでは事件の表面しか分からないのですが、両方を読むことで真の姿が浮き彫りになっていきます。
作品に奥行きと深みをもたせる両者のつながり、そして展開がニクい。

二度読み必至です!
この構成でしか味わえない、しびれる読後感があります。
湊かなえ独特の作風は顕在
本書の著者は、イヤミスの女王・湊かなえさん。
テーマは「宗教二世」、描かれるのも有名政治家の刺殺事件。
…ということで、本作も例外なく重苦しい空気が漂っています。
ネタバレ部分で後述しますが、メイン2人の人生も真っ暗闇の中そのもの。

「らしさ」全開です。
『暁星』ネタバレ解説

ここからは『暁星』のネタバレ解説です。
ネタバレを見たくない方は、以下のボタンをタップ!
永瀬暁と白金星賀の悲哀
本書でメインの登場人物として描かれているのは、永瀬 暁と白金 星賀。
その一生は、まさに壮絶です。
かなりシンプルにまとめていますが、やりきれない気持ち・歯がゆさも数知れず…

半生を追体験していくなか、何度も雑巾をキツく絞られたような気分になりました。
共通するのは不遇の家庭環境にあり、母親が「世界博愛和光連合(通称・愛光教会)」の信者であるという点。

いわゆる「宗教二世」ね。
似たような環境で生まれ、育ち、そして束縛されてきた。
だからこそ惹かれ合うものがあり、導かれるように出会うなかで心の距離がグッと近づいていくのです。
出会った回数は、たった7回(正確には6回)。
誤解も絡んだすれ違いもあり、切なさに拍車をかけるんですよね。
そして、悲劇の事件につながっていきます。
事件が起きた理由
学校のイベントに登壇した清水を、暁がナイフで刺殺します。
その動機は、例の「愛光教会」。
親戚に寄付金をせびりに来ている母親を見て、金銭的理由で症状が悪化していることを言えずに亡くなってしまった弟。
文学界の権威者・清水から、自分の作品を賞受賞者の講評の倍の分量でこき下ろされた父。
暁はこうした事実から、2人が亡くなった理由は教会の存在にあると考えていました。

だから教会と強くつながる清水を殺そうと考えた。
前半だけ読むと、このような解釈になります。
でもそれだと、1つの疑問が拭い去れません。それは…
暁は「生きろ!」と叫びながら、清水を刺したこと。

普通なら「●ね!」と言いながら飛び込むのではないでしょうか?
その真実は、後半パートを読むと浮かび上がるのです。
事件が起きた「本当の」理由
じつは星賀も、同じことを考えていました。
母からのキツい束縛から解き放たれようと、教会を退会。
するとデマの流布、映像化のキャンセルなど、作家人生に逆風が吹き荒れるのです。
今までの成功は、組織ぐるみの見えない支援による幻影だったのか。
その事実を知って絶望した彼女は、1つの決意をします。
「私の暗闇に夜明けはこない。太陽がなければ、金星は誰にも見えない。そんな人生続ける意味が分からない。でも、逃げたことにはしたくない。(中略)私をゾンビの巣窟に引き摺り込んだ、愛光教会の日本支部最高位、角龍、清原孝之を殺す。大切なナイフで」
【出典】「暁星」金星 第6章
暁は星賀がしくじったとき、自分の代わりに刺す役割。
あくまで星賀自身が手を汚すつもりでした。
しかし実際には、暁が先に刺してしまった。星賀の目の前で。
「生きろ!」
この言葉は清水ではなく、同じ会場にいる愛する人に向けられていたのです。
手を汚すのは、自分だけで良い。
星賀には、文章で人の心を動かすチカラがあるじゃないか。
物書きとして、自分の思いを受け継ぐ人間として、俺の分まで生きろ。

そんな強いメッセージが隠れていると感じました。
逆に星賀としては、不本意な形になってしまいました。
幸せの半分こは相手に多い方を、不幸の半分こは相手に少ない方を。

こんな風に考える、心の優しい女性なのに…
お互いを思いやる気持ちが、あまりに切ない。
このラストにたどり着いたとき、しばらく何も考えられなくなってしまいました。
フィクションとノンフィクション
いちばん衝撃だったのが、じつは後半の小説がフィクションの名を借りたノンフィクションであること。
作中では星賀が生まれ育ってから、事件が起きるまでが語られています。
そして冒頭で「この物語はフィクションである。」と謳っておきながら、作品のラストで「冒頭の一文をとる」となっているのです。
「最後に、私の意思で『金星』の「冒頭一文をトル」とする。まずは、ラスト一行から、ノンフィクションとなる。」
これが何を意味するのか。
暁の手記には、星賀の存在が一切描かれていません。
フィクションのままであれば、「架空の話だから」と言い逃れもできます。
しかしこれを覆し、ノンフィクションだと言い切ることは、
自身が事件の主犯である暁と関係があったこと、刺殺する意思があったこと、そして教会の元信者であると世界に公言することに等しいわけです。
かつて「私に夜明けは来ない」と発言していた星賀は変わりました。
こんな思いを胸に抱きながら、闇の中から一筋の光を見つけようとしている姿をイメージして、胸がじんわりと熱くなりました。
若い男女が暗い過去を持ち、お互いを強く思いやるという点は、東野圭吾著『白夜行』に似ていると言えるでしょう。
本書の紹介文には「ノンフィクションとフィクション」とあります。
しかし私の解釈は「2つの実話が重なり合った、1つの物語」です。
『暁星』耳読レビュー

今回紹介した『暁星』は、Audible(オーディブル)の配信があります。
オーディオファースト作品として、書籍発売日の約2週間前(11月11日)から先行配信されました。
著者ご本人によると、Audibleの先行配信を意識することなく、普段どおりに執筆されたようですね。
オーディオファースト作品だからといって、書き方を変えるとか、特に意識をするということはなかったです。小説家として、これまでと同じように本で読むのが一番面白いと思っていただける書き方をしようと、そこは変えずに書きました。
【出典】Amazonニュースより
さて、実際に聞いた5つ星レビューはこちら。
| 項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| おもしろさ | 一言一句、聞き逃すまいと没入しました | |
| 聴きやすさ | 良い意味で流し聴きできません…! | |
| ナレーター | 声質から感情の込め方まで「最高級」 | |
| 目次 | 全てあります |
本作の目玉は、あの櫻井孝宏さん・早見沙織さんがナレーションを担当している点にあります。

あ、あの声の人か、ってなるはずよ!
朗読についてですが、間のとり方、強弱の付け方、人物の使い分け、その全てがお見事。
「あれ、朗読止まった…?」と感じる余白の作り方も巧みです。
日常生活で「ながら聴き」していたのに、気づけば物語の中に入り込んでいる…そんなプロの技術を堪能できる作品。

ズルズル引き込まれました!
細かい伏線の確認、ストーリーの深堀りをするにあたって、耳からインプットできるのは大変便利です。
- 永瀬 暁(あかつき):主人公
- 永瀬 輝(ひかる):暁の弟
- 永瀬 明(あきら):暁の父、ペンネームは長瀬 暁良(ながせあきら)
- 白金 星賀(しろがねせいか):主人公、本名
- 金谷 灯里(かねたにあかり):作家としてのペンネーム
5分のサンプルは無料で聴けますので、以下のリンクからチェックしてください。
『暁星』まとめ

本書のオススメポイントは、3点です。
- 思わず二度読みしたくなる結末
- どこまでも残り続ける読後の余韻
- Audible版の朗読が素晴らしい
わたしはAudibleの先行配信を聴いたのですが、衝撃のラストに魂を持っていかれ、「これは活字でも読みたい…!」と強く思いました。
イヤミス要素を含んだ読後感もすばらしく、著者の本気が感じられる作品でした。

直木賞の候補作に上がることを期待したいです!
ながら聴きをやめて思わず物語に没入してしまう素晴らしい朗読、ぜひ味わってみてください。
ちなみに湊かなえさんの作品は、多くがAudible(オーディブル)で聴き放題対象になっています。
しかも元SMAP・稲垣吾郎さんなど、芸能人の朗読するタイトルが多く、実写版(映画・ドラマ)の出演者がナレーターを務める作品もあるんです!
何冊聴いても追加料金はかかりませんので、ぜひ無料体験から試してくださいね。
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